ドリーム小説
この幸せは、何時終わりが来てしまうのだろう
Dot Candy*
「ごほんっ」
和気あいあいと自己紹介をしていた私達の背後で、突然中年男性の咳払いが聞こえた。
少々耳障りな咳払いだったので、少し顔をしかめ、私は背後を振り返る。
(私の背に張り付いていた桃ちゃんは、すぐにパッと離れてくれた)(・・・背中が開放感に包まれてる)
「・・・あ」
思わず声が出た。
そこに立っていたのは、40〜50代の教師であろう男だった。
その男のこめかみには、明らかに青筋が立っている。
チラリと横に居る一護を見ると明らかに「ヤッベー」と言う顔をしていた。
「話をしてもよろしいでしょうかな?」
「あ、はいどうぞ」
瞬時に貼り付けた作り笑い(若干頬が引きつってる)を教師に向け、話の先を促す。
「―――――・・・と、言うことで以上が我が校の規則でございます。そして、クラス編成ですが・・・
さん・檜佐木さん・雛森さん・山田さんが3組、さん・日番谷さん・黒崎さん・阿散井さんが2組でございます。
それから、斑目さんはっ・・・!」
出かけた言葉を、教師は飲み込んだ。
そう、きっと気付いたんだ。
我が双子の姉、が放つドス黒いオーラに。
「先生?皆同じクラスではいけませんか?」
の表情こそ笑顔だが、その声や言葉の端はしに黒い何かを放っている。
正に恐怖の塊だ。
魔王さまもきっと吃驚。
私は密かに、に閻魔のような顔を向けられている教師に同情した。
日常茶飯事、の恐怖をチマチマと植えつけられている私は、まだ免疫があるにしろ、この教師はの黒い瘴気を浴びるのは初めての体験だ。
ぶっちゃけ、の顔を見ていない一護を始め恋次たちも顔を真っ青にしている。
(特に恋次なんてにイチバン近いから、かなり可哀想だ)
「ヒッ」
軽く教師が息を呑んだ音がした。
それから、教師は勇敢というか、無謀というか、とにかくどもりながらも声を出した。
「しっ、しかしこ、ここここれは決定事項であって・・・」
「もう一度だけ言いますね。 皆同じクラスにしてください」
にっこりと、そう、にっこりと微笑みながらが言う。
もう、これは“お願い”なんて可愛らしいものじゃない。
誰も断ることの出来ない、絶対命令。
教師も、これを断れば自分の存在が危ういと感じたのか
「い、今すぐ校長と話をつけてきます!!」
と、かなり焦った様子で、職員室から繋がっている隣の部屋へ駆け込んでいった。
(ちなみにノックはしていなかった)
「よかった。これで皆同じクラスよ」
天使の皮を被った悪魔だ。
小さく恋次が呟いた。
ダメだよ恋次!!それは心の中で呟かないと!!
私の忠告(声にはしていないけど)も空しく
「ん?何か言った?」
極上の笑みを浮かべたまま、は恋次の腕に自分の腕を通し、恋次を見上げた。
逃げ場を失ったね、恋次。小さく合掌。
「でもさ、ちゃん」
「ん?どうしたの桃ちゃん」
「何で皆同じクラスにしたかったの?」
可愛く首をかしげ、桃ちゃんはに問う。
(このの雰囲気をものともせずに言える桃ちゃんは凄いと思った)(あれ?もしかしてこの子もそっち属性?)
「だって・・・」
ちらりと私を見ては続ける。
「と離れるなんて寂しいじゃない!てゆーか、むしろと恋次が同じクラスだなんて許せなかったの。
もしも同じクラスになってたら、私、呪い殺してたかも」
ほんのりと赤く染まった頬を隠すように、両手で頬を包みながら言う。
それとは逆に、私と恋次は顔面蒼白もいいところ。
どっちが許せなかったの?!どっちを、てゆーか何を呪い殺してたかもしれないの?!ねぇ!!それにそこは何も照れる要素ないでしょオォォォオオォォ!?
に手を組まれている(という名の拘束)恋次は、もう軽く泣きそうだ。
あわれ恋次。
「そうだねっ!私だったら呪いより、足をコンクリートで固めて東京湾に沈めてたかも。阿散井くんを」
ニコニコと、に賛同しちゃう桃ちゃん。その背後には、私の目の錯覚か、黒いオーラが。
本当、なんだか恋次が可哀想に思えてきた。
(恋次の顔なんて、もう土色だって)(軽く逝きそうだよ)
つか、そこは爆笑するところじゃないよね、一護&修兵。
影に隠れて腹を抱えて無言で笑っている修兵と一護を見て心の中で突っ込みを入れる。
あれ、なんか私喋ってなくね?
これでも一応主人公なんだけど!
「様ァァァァァァアアァァl!!」
そして、しばらくして(といっても高だか数分だけど)教師が戻ってきた。
しかも、の名前に“様”を付けて。
一体、はこの教師の中のどの位に君臨したのかが気になる。
「こ、校長の許可をもぎ取りました!」
「そうですか」
「そ、それでですね・・・少々問題が生じまして・・・」
「どうなさったんですか?」
「えっとですね・・・1クラスに入る人数が多すぎまして・・・、今期中は皆様だけのクラス、ということになってしまうのですが・・・」
「大丈夫です、構いませんよ?むしろ、邪魔なメスブタ共が居なくて嬉しいくらいです」
聞 こ え ち ゃ っ た ! !
何か聞こえなくてもいいものが、の言葉の中で聞こえちゃったよ!!
「そ、そうですか!良かった・・・ あ!!様たちの教室は、西塔の2階でございます」
どこだよ西塔って。
(しかも塔って!!)
「はい、分かりました。あの・・・案内を誰かに頼んでも?」
少し遠慮がちにが言う。
「も、ももももももちろんにございます!」
もみ手逃げ腰で教師が答えた。
「すみません、お手数をお掛けしてしまって・・・」
まったくそんなこと思ってないでしょ。
頬に手を当てて軽く首を傾げて教師に言うを見て思った。
「いえ、様のお役に立てるのでしたら・・・」
ぽっと頬を染めて、まさかの爆弾発言投下の教師。
ロリコンか?!ロリコンなのか?!
何だか、私の双子の片割れが危ない世界に行こうとしているのを、私は止めないでいいのでしょうか。
(先生、あなたはにとってただの使い捨てカメラ以下の存在だということを早めに悟ってください)(てゆーか、お前そのうちつかまるなきっと)