テンションが高いのもご愛嬌


「へぇ、あれがボンゴレの十代目・・・何てゆーか、あの無重力ヘアはどうやってセットしてるんだろ?」


双眼鏡片手に、ターゲット確認。






第ニ病.転入 U




彼――ボンゴレ十代目もとい、沢田綱吉は今日も自らが送る、アンハッピーな日常にくわえ、何かとんでもないものトラブルが来ると感じたらしい。

背中を丸めて震わせていた。

それから、辺りをキョロキョロと確認する。



正解さ、ボンゴレ十代目。



フフンと口元に笑みを湛え、私は学校の屋上から双眼鏡を覗く。


それはもちろん、ボンゴレ十代目を観察するため。


フェンスに寄りかかり、よくよくボンゴレの未来を見つめた。



う〜ん。

ぶっちゃけ、ボスとしての資質ゼロってところね。

オーラも、何もかもが無い。

でも、そのカンの良さだけは褒めてあげる。

だけど、本当にコンナノがボンゴレのボスになれるの?


誰に言うでもなく、私は心の中で密かに呟く。


「あんなダメダメでも、次期ボンゴレの十代目だ」

突如として現れた、私以外の声の主。

それでも私は驚かず、言葉を返した。



「分かってるよ。アレを守るのが私の役目なんでしょう?」

「守るんじゃねーぞ」


否定の言葉に、私は双眼鏡から瞳をはずして声の主を見た。



「ファミリーになるんだ」


「・・・・・・冗談でしょ。私はまだマフィアになるつもりなんて無いんだから。何度も言ってるじゃない」



声の主は口元を吊り上げる。



「リボーン・・・・・・」

彼の名を口にした。



何を言っても無駄だ。

彼――リボーンの含みのある笑みをみて、そう悟った。


再び、ボンゴレ十代目を双眼鏡で見据える。



あ、なんか人数が増えてるし・・・






ボンゴレ十代目を中心に、左右に男が1人ずつ増えていた。

十代目の向かって右には黒髪の爽やかな好青年が。


(いかにも野球やってます!ってカンジ)



左には、銀髪でタバコを加えている不良が。

(つか、あれって確か“スモーキン・ボム”じゃない?)



十代目に視線を向けたまま、私は隣に居る赤ん坊・・・


もとい、最強(最恐?)ヒットマンにあれらの存在を訊いた。






「あれはツナのファミリーだぞ」




「・・・・・・マジで?右に居るスポーツマンはなんとなく分かるけど・・・。よくもまぁ、あの“スモーキン・ボム”を手懐けたね」

「それが、アイツ―ツナのボンゴレ十代目としての能力だ」

「へぇ」


双眼鏡から目をはなさず、相槌を打つ。




「それより・・・」

「ん?」

「いいのか?職員室に行かねーで」


ピタリ、と私の中の時間が止まった(気がした)

その後から、サァァァァっと血の気が引いてゆく。

双眼鏡から目をはなして、リボーンを見た。


「リボーン、今何時何分何秒?地球が何回転してる?」

「地球は一日に一回転しかしねーぞ。今は・・・8時5分だ」


その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は、真っ白になった。



ぎゃ――――!!ヤッバーイ!初日から遅刻★みたいな?ありがちだけど、決してあってはいけないパターンその1だねっ
 良い子は真似しちゃいけないゾ★」「いいから、さっさと行け」


間髪入れずにリボーンが、私の後頭部に銃を突きつけ言う。

ソレに対して私は笑ってみせ、

「ラジャッ!バイQ〜リボーン!!」




双眼鏡を乱暴に鞄の中へ入れて走り出す。

「その挨拶、結構古いぞ」とか言うリボーンの言葉を背に受けて、屋上を飛び出した。





てゆーか、なんでリボーンが知ってるのよ



























「って訳で、転入してきたばっかりで悪いが、、お前今日から風紀委員な」




「・・・・・・・・・は?」




“って訳で”とか言われても、どういった訳なのか、皆目検討もつきません先生。

話が一向に見えてこないんですけど!


ひっそり、心の中で叫んだ。


「いや、だからな、お前は今日から風紀委員なんだよ」


うん。

それは分かった。(いや、納得はしてないけど)


分かったけど(納得はしない)、まず他に言うべきことがあるだろこのハゲ・・・






普段、おしとやかで物静かな私が心の中限定とは言え、こんな事を言うのは理由がある。

正当な、理由があるんですよ!



今、私の目の前で偉そうにふんぞり返っている先生は、私が転入するクラスを受け持っている教師。

つまり、私の担任となる奴(男)だ。


コイツは、私が職員室に入るや否や、「お前がだな?お前、風紀委員になれ」と言ってきた。


もし、仮に私が転入生じゃ無かったら、どうするつもりなのだろうとか考える。

(私がここの生徒で、転入生と間違えられたら、即ソイツの息の根を止めてやる)(学校の生徒の名前くらい覚えてろっ!てね)






理由も何も言われずに、ただ「風紀に入れ」としか言わない教師。

もう、本当コイツに教師が勤まるの?



理不尽な事を言っている教師に、鋭い視線を向けて言った。


「理由を教えてください。
 なんで私がそんな面倒なことをしなくてはいけないのですか?」


あくまで敬語。

心の中では、すさんだ言葉使い。


その裏表はっきり使いこなしているしている私。(あぁ、なんて健気に生きてるんだろう)




「お前が、まだ並盛色に染まっていない転入生だからだ」


並盛色ってどんな色ですか?!


色々突っ込みどころ満載な先生の言葉を取り敢えず聞き流して、私はこめかみ辺りに青筋を立たせた。




「私はんな七面倒臭いことなんて嫌です。てゆーか、なんで誰もやらないんですか。ぶっちゃけ、ただ面倒くさいことをナイスタイミングできた転入生に押し付けているだけでしょう。
 やれよ誰か。(つか、絶対委員会に入っていない不良とか居るだろ?!むしろ、転入生じゃなくて、そいつらにやらせろってーの!!)」






一気に捲くし立てると、先生はしどろもどろになった。

(よし、効果はバツグン!!)
















接触はまだ先の話